alongsnowの日記

ペンドレット症候群により、先天性難聴。今は人工内耳ライフです。

ペンドレッド症候群、iPS治験開始

 

こんなに早く始まるとは思わなかった。

iPS創薬による、ペンドレッド症候群の治験。

www3.nhk.or.jp

 

動物実験なども経ずに行うのも国内初だとか。

 

 

すごいこと、の一言しかないです。

16人の方が治験に参加されるとのこと。

 

ペンドレッド症候群は・・・症状がしんどいですものね。

めまいだけでもしんどいのに、めまいが起きると聴力低下も引き起こすので

精神的にすごくしんどい。

また聴力下がるなあ、これ以上聴力下がったら「今の生活」はどうなっちゃうんだろう

か・・・ってsnowがめまいをよく起こしていた小学校4~6年のころは不安でいっぱい

でした。

 

めまい起こしちゃった・・・今回はどうだろう・・・聴力は維持できるだろうか?

それとも下がるだろうか・・・。

小学校の授業、友達との会話、通学路、親との会話、家族との会話、聞き取れなくなっ

てくるチャイムの音、インタホンの音、すぐ後ろに来る車の音、電話、笑い声、私の名

前を呼ぶ声、おばあちゃん、おじいちゃんの声ってどんなのだっけ?お父さん、お母さ

んの声もいつの間にか「消えて」いっている。私の声も・・どんな声だったっけ?一生

懸命しゃべっているのにまるっきり手ごたえがない。

少しずつ、けれども確実に「消えて」いく音。

世界ってこんなに静かだったっけ?と思った瞬間に襲ってくる耳鳴り。

定期的に襲ってくるめまいも辛い。

だいたい1年に1回めまいがあるかな、という感じだったけど、小学校4~6年の成長期の

ころはほぼ毎月のように起こしていた。

めまいは、冷たいものを食べる、体を冷やす、ジェットコースターなのど激しい乗り物

に乗る、頭を打つ、どこかへ旅行に行く、遊園地に行く、友達と思いっきり遊ぶ、

楽しいことをして興奮する、大きな音のするところにいる、寝不足、はしゃぐ・・・

そういったことの「日常生活」が引き金になって起きてしまうので、だんだん何かを

するのが怖くなってきたりもした。

 

めまいで寝ていることが多かった時、

おじいちゃんが買ってきたおもちゃのオウム。

めまいがしている状態で小動物の世話は大変だろうから、おもちゃのオウムな

ら世話も大変じゃないし、耳に近づけたらオウムの鳴き声が聞こえるだろう、って買っ

てきてくれた。

すごく嬉しかった。本当の小鳥の鳴き声は聞きたくても聞き取れないし、耳を近づけた

ら小鳥の鳴き声がする。ああ、小鳥ってこんな声なんだって感動もした。

めまいでほとんど寝てばかりの時も、そのオウムはそばに置いておいてた。

けれども、ある日聞き取れなくなっていた。

電池切れかなと思ったけど、オウムは羽をバタバタさせているし、くちばしも動いてい

る。多分電池が切れたのは私の耳の方・・・・。

おじいちゃんが、どうや?かわいい声で鳴くだろう、って言ってくる。

そうだね、って答えながら、お願いだからどんな風に聞こえる?って聞いてこないで

って思う。聞き取れなくなってん、っておじいちゃんに言いたくない。

 

けれども、おじいちゃんもどうやらオウムの鳴き声が聞き取れなくなっているって

気づいてしまったよう。

ちっちゃなサボテンがいっぱい並んだ可愛らしい鉢植えを買ってきてくれた。

これだったら眺めているだけでも楽しいだろうって。

そのサボテンもすごく嬉しかった。ミニチュアサボテンの周りにはキリンとか象とか並

べられてあって、土の色もオレンジとかブルーとかのカラフルなやつだった。鉢の周り

はレースで飾られていた。上から見ても横から見ても嬉しくなるようなサボテンだっ

た。

枕元に置いてずっと眺めていた。めまいで起き上がれないときは、レースの部分とかず

っと眺めていた。ちょっとめまいが治ってくると起き上がってサボテンとか象とか見た

りもしていた。

けど、ごめん。

枯らせた。

 

おじいちゃんも困っただろうな。

この孫娘には何買ったらいいんやろかって。サボテンすら枯らすし・・。

けど、懲りずにいろんなものを、これだったら喜ぶかなってあちこち探して持ってきて

くれた。杖つきながら一生懸命あちこちにいって、いろんなお店覗いてくれていたらし

い。

もし、ペンドレッド症候群の薬が売ってたら、きっと高くても一番に買いに行ってくれ

ただろうな。

あちこちのお店覗きながら、めまいに効く薬があったらいいのにって、もしかしたら売

っていないかなっていつも思う、ってある日ポツリと言った。自分がその薬を見つけて

大喜びで持っていく夢も何度か見たって言ってた。

 

治験に使われる薬は免疫抑制剤のシロリムス。

決して「軽い薬」ではないのだろうと思う。

副作用もあるかもしれない。

 

けれども、シロリムスがペンドレッド症候群にとっての希望の一筋になればいいと

切に思う。

どうか効きますように。

ずっとずっと音が周りから消えていきませんように。

ペンドレッド症候群と診断された子どもたち、そして親御さんを始めとするご家族が

が、それでも将来不安をもつことがありませんように。薬があるから大丈夫と思えます

ように。

治験に参加される16人の方々も、どうか症状が良くなりますように。

 

 

おじいちゃん、薬あったよ。見つかったよ。

え?私?

うん、間に合わなかってん。

内耳の細胞ほとんどダメになっちゃったし・・。

けどね、おもちゃのオウムの音はまたわかるようになったよ。

本当の鳥の鳴き声も聞き取れるようになったよ。カラスしか周りにおらんけど。

人工内耳のおかげやねん。

でも、おじいちゃんの声もう一度聞きたかったな。

なんか記憶にある声は低いけど優しい声やったよね。

 

え?サボテン?

・・・うん、相変わらず枯らせてるで。