人工内耳の聞こえ方

 人工内耳はどう聞こえるか?

 これは、補聴器時代に「どれくらい聞こえるの?」と聞かれて、どう答えようか

迷ったのと同じだと思う。聞こえることというのがどういうことなのか?というのを

まず自分が知らないから。

 

 ただ、補聴器とは全然聞こえ方が違うというのはわかる。

 補聴器時代は「あ・い・う・え・お・・・・・」を聞き取って初めて単語がわかる

という聞こえ方だった。「今日は、いい天気ですね」というのを「き・・う・・いい

て・き・で・・ね」というかんじで聞き取る。で、聞き取れた声をつなげていって

一つの文章を作り上げていく。

 聞き取れないときは、もう一度聞く。「きょ・・・・て・き・・・・ね」

 先ほどのと繋げる。「きょう、いいてんき・・・」までわかればもう大丈夫。

 空を見上げる。うん、晴れている。いいお天気だ。

 間違いない。

 「ええ、いいお天気ですね。」

 

 小学校5年で失聴してからは、読唇にかわった。

 それでも一緒だった。「あ・い・う・え・お・・・」の口形を読み取って文章を作

り上げていく。

 「きょう、いいてんき・・・」まで読み取れたらだいたい、自分がいる場所・相手

の視線、手の動き・しぐさ・表情を読み取って、文章ができあがる。

 

 だから、人工内耳もそうだと思っていた。

 今までできなかった「あ・い・う・え・お・・」が聞き取れるようになるのだろう

と。だから、あいうえおが聞き取れるようになったら、単語がわかるようになるだろ

う。単語がわかるようになれば、文章も聞き取れるようになるだろうと。

 でも、人工内耳の聞こえ方は全然違っていた。

 宇宙語だった。

 人間がしゃべったら、こんな声?みたいな。

 あいうえおなんて全然わからん。

 さっぱりわからん。

 まだ、100dBで聞き取っていた補聴器のほうがまだ人間っぽい声やったで。

 かろうじて犬の吠え声と人間の声くらいは区別つく。

 

 でも、脳みそが勝手に聞き取っちゃうのである。

 「今日」って。

 脳みそが、ほらほら、snow、今あの人「今日」って言うたで。って

 私は、えええええ?って感じである。

 相手は人間で、犬ではない。だからワンワンとは言っていない。

 それはわかる。

 でも「き」と「ょ」と「う」なんて言うたか?

 でも、脳みそはどや顔である。「今日」ってわかったでっと。

 私は相手に尋ねる。「すみません、さっき「今日」って言いました??」

 「うん、今日って言ったよ。え~snow、聞き取れたんや?すごいやん」

 この時は私でも聞き取れる「今日」。

 私は「意識」で、脳みそは「無意識」なのかもしれない。

 「意識」している私はどんなに聞き取ろうとしても「今日」がわからない。

 でも、「無意識」に脳みそが「今日」と聞き取っている・・というか感知してい

る。ああ、この聞こえのパターンは「今日」やなと。

 でも、まだ私も脳みそも「いい天気ですね」までは聞き取れない。

 なので、

 「ああ、今日は金曜日ですよ~」なんて変な返事をしてしまったり。